第4章 Rey2
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社長と紡さんに流されたままでいいのか。
そう聞かれればよくないと答える。
でも期待されてるみたいで悪い気がしないのも事実であって…。
「早速だけど、その鍵の部屋へ行ってくれないかな。必要なものがあれば用意するよ」
『わ、わかりました…』
社長室を出、紡さんに案内されながらその部屋へと向かう。
一番奥の部屋だったようで、私自身ここに部屋があるなんて知らなかった。
『…思ったより綺麗ですね』
「私が掃除しましたから!」
『何に使うかも知らずに…?』
「お父さんってそういうところありますから」
紡さんも被害者側なのかな…。
と、そう思っていると紡さんが私をじっとみていた。
同性とは言え少し恥ずかしい。
「形から入ったほうがいいですね」
何の話か分からず私は首をかしげる。
紡さんが何かを思いついたのか、声を上げた。
「アイドルの時は髪型と服装、変えましょう」
『……むしろ今の格好の方が違和感なんですけど』
スーツスカートに普段片目を隠している前髪を上げている。
社長に顔は隠さない方が女性らしいと言われたせいだ。
本音を言えばスカートは落ち着かないから履きたくない。
「そうなんですか?」
『いつもはこんな感じで…』
前髪を固定していたピンを外し、手櫛でいつもの髪型に戻す。
やはりこっちが落ち着く。
「……無理に変える必要はなさそうですね。中性的な外見が引き立って…みです」
『最後聞こえなかったんですけど』
「い、いえなんでもないです」
紡さんが慌てたように首を振った。
人を観察する眼は父親譲りなのかもしれない。
『……両立なんて出来るとは思えない』
私は思ったことを呟いた。
隠れてコソコソすることなら慣れているけど、事務員として他の人にも会うのだから。
ここにいる限り、素の私で事情を知らない人に会うなんてことがあるに決まっている。
「私が全力でサポートします」
『IDOLiSH7はどうするんですか?メインはそっちでしょう?メンバーも多いんだから私のことは』
「零さんのデビューまで、性別は何としても公にしないように頑張ります!」
『そっち』
それならなんとかなるかも知れないとか思ってしまう。
だって私がボロを出さなければいいだけの話なんだから。