第4章 生と死の狭間。
思い通りの夢の世界に行く方法を見つけた。その方法を試せば自分の思い描く夢を見られる。
みんなが自分に優しい世界に行きたかった。だからその方法で、せめて夢の中だけでもみんなが自分に優しくしてくれればいいと思った。
本当に見られるとは思っていなかったし、ただの好奇心だった。そうなればいいな、なんて、軽い気持ち。だけどそれは本当で、だから少ずつ、確実に、夢に依存していった。
今日も幸せな夢へと落ちる。みんなが声を掛けてくれて、笑顔を向けてくれる世界。必要な人だけがそこにいて、知らない人なんていない世界。
いつもと同じように夢の中の住人と言葉を交わして談笑していると、頭上から知らない声が降ってきた。そんなはずはないと思いながらも声がした方へと視線を向ける。
和装姿の、同じ年くらいの男の子だった。
「はぁ、ヒトガタか」
独り言のように呟いた少年が目の前に立つ。がしがしと後頭部を掻いた少年は大きくため息を吐いた。見たことのない、知らない顔に動揺する。それに同調するかのように世界が僅かに歪んだ。
少年はこちらを舐め回すように上から下まで視線を動かす。どこかで擦れ違った人を無意識に思い出したんだろうか。そうに違いない、そうに決まってる。夢の世界に知らない人間がいるわけない。動揺する頭を必死に宥めるようにこの状況の言い訳を探す。
「お前、」
不意に少年がこちらに声を掛けた。びくりと肩が揺れる。だめだ、喋るな。喋られると、夢の中という言い訳が出来なくなる。
そもそもこの夢の世界は自分の都合の良いように動く仕様になってるはずだ。だからこの不足の事態になんとか言い訳をつけないと、きっと崩れてしまう。
嫌な汗が滲む。目の前の口がゆっくりと開き、喉仏が上がり、初めて聞く声が鼓膜を揺らした。
「イキモノだろ」