第2章 面白い奴
「・・・」
するとまたいちごが表情を変える。一瞬にして暗く俯き加減になった顔を見て、急に具合でも悪くなったのかと不安になる。
「お、おい、どうし「見ませんでした!!!」
・・・は?
「人のことちっこいとか馬鹿にしたり、それにひ、人のパンツこっそり見て、『いちご』とか言ってくるような人の泳ぎなんてたいしたことないと思ったから・・・だから山崎宗介の泳ぎなんて一切見ませんでした!!!」
あっけにとられている俺を前にまくしたてると、いちごはぷいと背を向けた。
「ふ、ふんっ!山崎宗介のばーか!!今度いちごって言ったら許さないから!!!」
いやまたフルネームかよ、とか俺先輩なんだが、とか思っているうちに、捨て台詞を残すといちごは早足で姿を消してしまった。
「・・・・・・ふはっ!!!」
まるで嵐が過ぎ去った後みたいに辺りは静まりかえっていた。しばらく呆然としていたが、思わず噴き出してしまう。
『いちご』って言ったら許さないと言ってた顔も真っ赤だったし、何よりあんな物の言い方をされるのは初めてだった。
「おもしれぇ奴・・・」