第2章 面白い奴
「で、どうだった?今日の練習。合同練習、初めてだろ、お前」
「へ?あ、ああ、ええと、そうですね・・・」
このままじゃあなお疲れ、でもよかったが、それもあんまりだったから、一応社交辞令で聞いてやった。いちごは急に話題を変えられ、きょとんとした顔をしたが、すぐに続けた。
「私は水泳初心者なので、まだ詳しいことはわかりませんが・・・やっぱり強豪校というだけあって、鮫柄の皆さんはきちんと目的意識を持って練習に臨んでいることが伝わりました。あと、人数が多いと切磋琢磨し合えるので、いいなあと。うちは人数が少ないので、ぜひまた合同練習したいです」
へえ、初心者の割にはちゃんと見てるじゃないか、と少し感心する。
「おお、それなら凛がまたやる、みたいなこと言ってたぞ」
「凛?」
「ん?あー・・・江の兄貴でうちの部長の松岡凛な」
さらりと凛と言ってしまったのを言い直す。この前のスプラッシュフェスの時にはいなかったし、本当にこいつは入部したてなのだろう。凛と言ってもわかるはずがない。
「ああ、江先輩のお兄さん・・・そうそう、お兄さんと言えば!!」
パッと一瞬で表情を変えるいちご。
「すごかったです!江先輩にも少し聞いてたんですが、一瞬で人を惹き付けてしまう泳ぎというか・・・遙先輩の泳ぎもすごいなと思ったんですが、同じぐらい感動しました!」
七瀬と同じぐらい、というところにムッとしたが、凛を誉められれば悪い気はしない。
「へえ、なかなかよく見てるじゃねえか。で・・・俺の泳ぎはどうだった?」
気をよくした俺は、いちごに聞いてみた。こいつが俺のことをどう表現するのか、少し興味があった。