第11章 大好きがとまらない
「・・・おい、なにやってんだ、御子柴」
「うわ!や、山崎先輩?!!」
「そ、宗介さん!」
いつの間にか百太郎くんの後ろに宗介さんが立っていた。百太郎くんがパッと私から手を離す。
はっきりとはわからないけど、宗介さん・・・なんか怒ってる?
「・・・・・・おう、お待たせ。じゃ、行くか」
「あ、はい・・・えっと、またね、百太郎くん」
私に向き直った宗介さんの声は、さっきの不機嫌そうな声とは違っていつもの宗介さんの声だった。少しホッとして、宗介さんの後を追う。宗介さんはもうすでに正門から出てスタスタと歩いて行ってしまっていた。
「え?!な、なんでヒカリちゃんと山崎先輩が?!ちょ、ヒカリちゃんとどういう関係なんすか、山崎せんぱーーーい!!!」
百太郎くんが喚いているけれど、宗介さんはそんなのお構いなしだ。ずんずんと私の前を歩いて行ってしまう。その後を私は小走り、というよりもほとんど走るような形でついていく。
「あ、あの!・・・そ、宗介さん、歩くの少し早・・・!!」
さすがにこの速さにずっとはついていけそうもなくて、宗介さんの背中に声をかけようとした時、宗介さんがピタリと足を止めた。勢い余って宗介さんにぶつかりそうになるのを慌てて避けた。
「・・・・・・ここまで来りゃいいだろ」
「へ?」
宗介さんは後ろを振り返って何かを確認しているみたいだった。
「あいつ・・・御子柴、うるせーから・・・・・・歩くの早かったろ、悪かったな」
「あ、いえ!だ、大丈夫です・・・」
そう言うと宗介さんは、さっきとは違うゆっくりとしたペースで歩き出した。今度は私も、その隣を自分のペースで歩く。
・・・そうだった。この前、私を家まで送ってくれた時も私、宗介さんが歩くの速いなんて全然思わなかった。そう思わせないように、宗介さんが自然に私に合わせてゆっくり歩いてくれてたんだ。宗介さんと私の歩幅、全然違うはずなのに・・・・・・好き・・・だなあ・・・宗介さんのこういうところ、私、すごくすごく好きだなあ・・・・・・
そんな思いを込めて隣の宗介さんを見上げたら、バッチリ目が合ってしまった。