第11章 大好きがとまらない
「・・・し、心臓が飛び出そう・・・」
かつてここまで緊張したことはないんじゃないかってぐらいにドキドキしている。でも、もう夜遅いし、あまり遅いと迷惑になるし、そろそろ心を決めないといけない。
「・・・・・・えい!・・・・・・」
もうどうにでもなれ!そんな気持ちで通話ボタンを押した。宗介さんが出るのを待つ間、携帯を持つ手が震える。
『・・・はい』
数回コールした後、宗介さんが出てくれた。いつもとおんなじだけど、いつもと少し違う感じの低い声が電話の向こうから聞こえる。
「あ、あの!しょ、しょーしゅけさんっ!私、ヒカリです!」
・・・思い切りかんでしまった。どうしよう、恥ずかしすぎておかしくなりそう。
『・・・俺はしょーしゅけじゃねえ・・・切るぞ』
「ま、待って下さい!そ、宗介さんっ!!ヒカリです!」
『くっ・・・わかってる・・・どうした?』
切られてしまうんじゃないかと慌てて言い直したけど、宗介さんが笑ってくれたおかげで少し心が落ち着いた。
「あの!せ、先日は、その・・・ありがとうございました」
『ああ・・・別にたいしたことはしてねえよ・・・大丈夫だったか?その後』
「は、はい!宗介さんのおかげで!」
『・・・そうか。よかったな』
「は、はい!」
宗介さんの声って不思議だ。低くて、言葉は短いしぶっきらぼうな感じだけど、なんだか聞いているとホッとするような、安心するような。
「あの!それでこの前お借りしたタオルを返しに行きたいんですけど・・・」
『ああ・・・他にもあるし、いらねえ。お前にやるよ』
それは・・・それはとっても嬉しいけど・・・せっかく宗介さんが親切に貸してくれたタオルをもらってしまうなんて、そんなわけにはいかない。
「い、いえ!そういうわけにはいきません!あの・・・うち明日練習午前だけなんです。その後、鮫柄まで行こうと思ってるんですが、宗介さん、空いてる時間とかありますか?」
『あー・・・明日か・・・』
明日は土曜日。学校はお休みで水泳部の練習だけがある。午後なら何もないし、宗介さんが都合のいい時間に私が合わせて行けばいい。・・・そう思ったけど、宗介さんの声、迷惑がってるように聞こえる・・・
・・・どうしよう、面倒くせえとか言われたらきっとショックで立ち直れない。