第9章 はずむ心
「で、でも宗介さんって見た目で誤解されがちだと思うんですけど、本当は、と、とっても優しいんですよ。え、映画の時も家まで送ってくれたし・・・」
宗介さんのことを誰かに話すだけで、なんだかくすぐったいような感じ。あの日のことを思い出すだけで、また胸がぎゅっと苦しいような切ないような変な感じになる。
「へぇ〜・・・」
「え?ど、どうかしましたか?」
渚先輩がまじまじと私の顔を見つめてくる。何か変なことを言ってしまったのだろうか。
「ううん、ヒカリちゃん、最初は山崎くんのこと怖がってたのに、ずいぶん仲良くなったんだなって。いつの間にか名前で呼んでるし」
「や、えと、あの、そ、それは・・・」
そうだ、最初は合同練習に行きたくない、山崎宗介に会いたくないって言ってたんだ。あれからまだ一ヶ月と少しぐらいしか経ってないのに、私の気持ちもかなり変わったな、と思う。
「ふふっ、今度僕も名前で呼んでみようかなあ。そうだなー『宗ちゃん』とか、どうかな?」
「あはは!それはものすごく嫌がりそうです」
宗介さんの嫌がる顔を想像して、思わず笑ってしまった。でも、なんとなく嫌がりながらも許してくれそうだなあ、なんて。
「渚もヒカリちゃんも早いね。さ、練習始めよっか」
私と渚先輩が話をしていると、真琴先輩達がやってきた。
色々考えていても今は会えないし、自分にできることを精一杯やろう。