第1章 最悪の出会い
「あの・・・す、すいませ「ちっこすぎて見えなかった」
・・・今、この人なんて言った?
「どこのガキが紛れこんだのかと思ったけど、お前、その制服・・・もしかして岩鳶のやつか?」
・・・ちょっと待って。言葉にならない。怒りで。
『もしかして岩鳶のやつか?』のところ、お前、その成りで高校生か?みたいなニュアンス込めて言った、この人。
確かに言ってることはそのとおりだ。身長は平均よりもずっと低いし、たまに中学生どころか小学生に間違われたりもする。だけど、こんなにずけずけ言ってきた人は初めてだ。
尚更、このまま黙ってる訳にはいかない。
「そ、そうです!この前、マネージャーとして入部した岩鳶高校1年の長島ヒカリです!」
「・・・おお。俺は鮫柄3年の山崎宗介だ」
こっちが勢いつけて言ったのに、さらりと返しやがった!なに、この山崎宗介って人!しかも先輩だなんて。
まあいい(よくないけど)、とにかく私は急いで着替えてこなきゃなんだ。
「あの、それじゃ、失礼します」
そう言って山崎宗介(先輩とか呼びたくない)の横をすり抜けて行く。こんな腹が立つ人なんて忘れて、今日の練習もたくさん江先輩に教えてもらうんだ。
そう気を取り直した私の耳に、ぼそりと呟く声が聞こえた。
「危ねえからもう走るんじゃねぇぞ・・・いちご」
・・・いちご?意味がわからなくてそのまま行ってしまいそうになったけど、ふと振り返った時の山崎宗介の顔を見てわかった。
「っっ!!み、み、見て・・・!!」
私の言葉なんて聞いちゃいない。ニヤリとした顔のまま山崎宗介はプールの方向へと姿を消してしまったのだった。
今日の反省・・・
プールサイドは走らない。
合同練習の時は、いちごのパンツをはいてこない。