第5章 人生最大のピンチです
鮫柄学園の最寄り駅で降りて、凛さんと待ち合わせる。
「んーっと、もう来てると思うんだけど・・・あ、お兄ちゃん?・・・うん・・・わかった。なんか、お兄ちゃん、そこのコンビニに寄ってるみたいだからちょっと行ってくるね。ここで待ってて」
「あ、はい」
江先輩は凛さんからの電話で、すぐ近くのコンビニへと入っていった。私は、人通りの邪魔にならないようになるべく道の端に寄ろうと後ずさった。その時だった。
「あ、ごめんなさい・・・げ」
「あ、すんません・・・お」
誰かの背中にぶつかってしまった。ずいぶん大きな人だなあ、謝りながら見上げるとそこには例によって、山崎宗介がいた。いつものジャージとか水着とは違って、今日は制服だった。
「お前・・・俺見て『げ』って言うのいい加減やめろよな」
「だ、だって仕方ないじゃないですか」
だって本当にそう思うのだからどうしようもないし、口から自然に出てしまうのだ。
「な、なんでこんなところにいるんですか?」
「いやそれはこっちの台詞だろ。俺は、凛に連れ出されたんだよ。映画行くから来いって」
・・・ちょっと待って。私は凛さんと(江先輩もだけど)映画を観に行く。そして、山崎宗介は凛さんに連れ出されてここにいると言う。
「おーい、宗介、ヒカリ!お待たせ」
「さ、みんなで映画行こ!」
こ、この面子で映画観に行くってこと?!!
「おい何変な顔してるんだよ、いちご」
「へ、変な顔なんてしてない!あといちごじゃないっ!・・・り、凛さん、こんにちは!さ、江先輩、行きましょ!!」
まだ何か言いたそうだったけど、気にしない!映画だし、特別話する必要もないし、江先輩からもう離れない!
だけどどうしよう、意識しないと思えば思うほど、山崎宗介の存在が私の中で大きくなっていく。顔が熱くてドキドキが止まらない。