第3章 【東京/四男/not腐/舞台共演】
一方、なんでもできると噂の隣の松岡さんや、彼のグループの才能の塊と呼び声高い長瀬さんは、もちろん凄まじく努力をされているのも存じ上げているのだけれど、それでも私がどうしてもできない、「役の空気」を息を吸うようにさらりと纏うことが出来る。
やってらんねぇと思いつつ、すごいと思わずにはいられない。
舞台に上がるころには、松岡さんはどこにもいなくて、そこにはワーニャ伯父さんしかいない。この凄まじさ。
こんな人と仕事をするのだから、もう凡人は努力しかすることがないのです。
恵まれていることに、こんな私を評価して仕事を与えてくださる方が一応は途切れないのだから、芸能界はわからない。
「もうしばらくは番宣ありませんよね」
「二人で行くのはないね」
「座長にばかり番宣をお願いして心苦しい限りです。でも番宣とかバラエティとか苦手なので正直すごい助かってます本当にありがとうございます、まこと失礼ながらこの調子で今後ともおひとりでお願いしたいです」
「そこは頑張ろうぜ準主役!」
「いえ・・・もうほんと面白いことが言えなくて」
書いてある台詞を読むお芝居と違って、大まかな流れが書いてある台本があるとはいえ、基本的にその場で考えて話さないといけない、なおかつ「お約束」「話の流れ」「オチ」に注意が必要なバラエティは正直苦手だ。
たまにお芝居やら何やらで活躍するアイドルを「畑を荒らしに来る半端者」呼ばわりする心ない人がいるけれど、私からしたら単にマルチな才能があるだけだと思う。
頭がいいのだ、彼らは。
あれほどの立ってるだけで視線を集めるオーラがあって、なおかつ面白いことも言えるなんて昨今のアイドルはすごい。
特に松岡さんのグループはもう「マルチ」なんて言葉でくくっていいのか戸惑うくらいの活躍ぶり。尊敬しかない。