第11章 11
そっと
握ってない方の手でさわさわされる
「っ………っ……」
息を殺した様な
もしかして
和さんも泣いてる?
「和さん……ひゃっ!!」
降り向こうとしたら背後から抱きしめられた
「向かないで」
「はい」
「大丈夫。
大好きだよ
今由梨の気持ちが伝わった気がして
溢れただけだから」
大好き
そう言われて
同じ気持ちを受け取る和さん
回された腕にそっと触れる
「あったかいです」
何もかも
体温だけじゃなくて
心があったかい
翌朝
ゆっくり2人でお風呂に入って
コーヒーを飲みながら他愛のない話をした
子供の事とか
今後の事とかは一切触れずに
私もあの時の妊娠、出産は忘れられないし
もし挑戦するにしてもすごく勇気がいる
今はこの背中を自分から見せれただけで
もう使い果たしてしまった
そんな事も和さんにはわかってしまうんだろうな
いつにもなくぴったりくっついてくれる和さんが
なんだか愛おしくて
胸がいっぱいになった
「あれ、由梨さん今日メガネ?」
やっぱり目が腫れてしまったから
今日はコンタクトがつけれなくて
自宅に保管してたメガネをかけて現場に行くと
悠くんに早速突っ込まれた
「ていうか、なんか腫れてます?大丈夫すか?」
「あ、やっぱりばればれかな?…どうしよう」
昨日泣いた事は明らかで
どうやって言い訳しようか悩んでた
「フフッ。…悠ちゃん。野暮なこと聞いちゃだめよ。ましてや旦那のいる前で」
「……えっ?!…あ!す、すみません!デリカシーなさすぎました!」
何かを勘違いした悠くんは慌てて私のキャリーケースを奪い取りメイク道具を並べに行ってしまう
「和さん?何か大きな間違いな気が」
「ん?だって。間違いではないでしょ?色々と」
色々と。だけを小さく囁く和さんは多分確信犯で
「顔赤いよ」
「うぅ。」
また和さんに翻弄されっぱなし