第1章 1
隣にいる和さんを見あげると私を見ることはなく話を続ける
「輝とさ。この前飲みに行ったんだけど」
輝さんとはあれから何度も飲みに行っているみたいで、結婚してからは私も何回か飲みに誘われる事がある。
「前からちょいちょい言われてんたんだけど。……由梨。もう二度と会いたくないよね?あの人と」
ドクン。と胸が波打つような気がした
和さんから視線を外し前を見据える。
多分今、私も和さんも似たような顔をしていると思う
あの人って?
そんな事聞かなくてもわかってしまうのは、和さんの雰囲気で、感じてしまう。
暫く黙っているとタバコを消して頭を撫でてきた
「供養に行きたいんだって。」
「へ?」
もう一度和さんを見ると今度は和さんも私を見つめていて優しい顔をしていた。
和さんは私があの子を大事に思ってる事をよく分かってくれていて。
今も変わらず棚は綺麗にされている。
私が帰れない日も花を入れ替えたりしてくれていて。
だから多分、行ってきたら?と言う意味で私に話したのだと思う。
でも。
「和さん。…いいです。会いませんし。行きません。」
そんなことして、誰かに見られてしまったら。
結婚して数年経つ今でもたまに家の前に週刊誌がいることもあって。
家に入る姿を撮られてしまったことのある私はもう和さんの嫁だとバレている。
そんな私が軽率な行動をとってはいけない。
私はあの子のお母さんだけど、和さんの嫁でもある。
今生きて一緒にいる人を大切にしたいって思ってる
それくらい。和さんが大切な存在なのだ。
「思っていてくれてるって。分かっただけでも嬉しいですから。」
ニコッと笑いながら言うと、…そう。と少し困ったような。ちょっと微笑みながら返された