第8章 8
仕事は滞りなく終わって
帰り支度をしてると
「和さん。今日はこの後ありますか?」
この言い方は多分お誘いかな?
「ないよ?由梨もないんでしょ?」
なんで分かったの?という顔をするので、フフッ。と笑って返す
「どっか寄る?あれ、車で来たんだっけ?」
「はい。和さん乗って行かれますか?」
車のキーを見せられるので手を差し出した
「俺が運転するよ」
「え、でも和さんお疲れでは?」
それは貴方も一緒でしょ?と言い鍵をそっと手から取りあげて
「悠ちゃん乗って行きなよ。近くの駅でおろしたげる」
「え!そんな!ご夫婦の邪魔なんてできないっす!」
そんな全力で首振んなくてもいいのに
「そうなの?どうしよっか」
お言葉に甘えちゃう?と由梨を見るとちょっと考えこみ
「悠くんが大丈夫っていうなら」
「全然平気です!お疲れ様です!俺先出ますね!」
これ以上引き止められまいとしたのか全力で去っていく悠ちゃんに吹き出した
「クフフっ。逃げなくてもいいのに」
「フフッ。ですね」
由梨も肩を震わせて笑ってて
ちょっとそれに安心してしまう
良かった
ちゃんと笑ってる
車に乗り込むと相変わらずの後部座席で
いつもの由梨に思わずニヤつきながら
「飯弁当食べた?」
「はい。和さんも食べてましたよね?」
てことは夜ご飯はなしでいいか
「由梨は明日は俺らの現場から?」
明日は昼からで
だいぶ余裕がある
「はい。今空さんレコーディングで引きこもりしてるんで」
「そりゃ大変だ」
「もうちょっとしたら差し入れして元気か様子見に行こうかなって思ってます」
鏡越しで見るとほんと心配そうな顔をしている由梨
「俺からも何か用意するから持ってってよ」
「はい!きっと喜びます!」
今度は嬉しそうな顔
このくるくる変わる表情はなんとも飽きなくて
「ちょっと寄り道してい?」
「はい。もちろんです」
なんだか次はワクワクしてて
見えないように笑うのは骨が折れる