第8章 8
由梨が旅行に行って
仕事もレギュラーが一本だったから普通に夕方帰ると
「あ!お帰りなさい!和さん!」
求めていた(お帰りなさい)じゃなくて
「なに、まだ居たの?」
「ちゃんと仕事行きましたよ!」
あ、そう。と言って荷物を置いてシャワーをささっと浴びてリビングに戻ると
「なんか、主人に似てきた?」
思わずそんな事言ってしまうのは
由梨の作ったストックのつまみとキンキンに冷えたビールが置いてあったから
タオルでガシガシ頭を拭きながらソファに座ってビールをぐいっと一口
きっとあの人も今頃3人で飲んだくれてんだろーか
想像してニヤッと笑う
「お!このつまみ美味いっすね!」
そして現実に戻された
ゲームを付けてコントローラーを二つにして秋ちゃんに渡す
「今日は何やりますー?」
この人もそこそこなゲーマーで
暫くしっぽり飲みながら2人で盛り上がる
「和さん一旦休憩」
トイレ!と言っていなくなる秋ちゃん
その時ふとスマホに通知が来ていることに気づいた
[和。由梨ちゃんがあんたの事で悩んでるみたい。ちゃんとして。由梨ちゃんみたいな人もう2度と現れないよ。大事にしてよ私の大切な妹なんだから」
姉ちゃんのお怒りメールに一瞬息が止まる
「……へぇー」
「ん?どうしました?」
思わず出た独り言、というかひと息に不思議そうな顔で戻って来る秋ちゃん
「秋ちゃんさぁ。由梨からなんか聞いてる?」
時々なんか考えてんなってちょっと思い詰めてたのはわかってて
でも様子を伺おうとすると困った顔をするから気にしないようにはしてた
本当に助けてほしい時の顔は何度も見てて
でもその時とはちょっと違うんだよね
「やっぱいーや」
秋ちゃんから聞くのもなんだかなーって思ったのは単なる天邪鬼で
「なんすか。それ。……ま、聞かれてもわかんないけど。和さんの方がよく分かってんでしょ。旦那様なんだし」
トイレ帰りに新しく持ってきた酒を飲み始める秋ちゃん