第17章 17
「差し入れ持ってきたよ」
私をずいっと前に押し出す空さん
「…クフフっ。差し入れ?」
空さんの持ってる袋と私を交互に見る和さん
「そ。差し入れ。どっちもね」
袋をテーブルに置いた後私の頭をぽんぽんする空さん
みんな注目してて思わず赤くなる顔
さっと空さんの手を避けて後ろに隠れたら、クフフっ。と吹き出す和さん
「ほーんと。ありがとうね」
チラッと和さんを覗くとニヤニヤしていた
「もう全然わからないです。どういう事ですか?」
「ニノくんのラジオで流すカバー曲にちょっとコーラスで参加しよっかなって。ほら、言ったでしょ?ツアー前に飲みに行ったって」
そういえばそんな話してた気が
でも、なんで私をここに連れてきたの?
それは全然意味がわからなかった
「空ちゃん。由梨が戸惑ってるよ」
含み笑いをしながら私を見る和さん
「え?だからさ〜」
「いや、そういうことじゃなくて!」
「ンフフ。多分ね。空ちゃんの粋な計らい?じゃないの?」
ん?
一体どういうこと?
「……あ、そういうことか。そうだよ!由梨全然会えてなかったでしょ?ニノくんとまだすれ違いだって言ってたし」
なるほど
私が全然会えてなかったから
空さんの仕事ついでに私を連れてきてくれたってことか
「ま、それは建前なんだけど」
「へ?」
「ンフフ。大方由梨のその反応が見たくて連れてきたんでしょ?」
「さすがニノくん。面白かったよ由梨。ありがとう」
ケラケラそんな事を言いながら笑う空さん
「……すっごく恥ずかしいです。帰ってもいいですか?」
「ダメ。終わるまで待ってて」
何故か否定する空さん
どうしよう。と慌てていると笑い出した
「あはは。ニノくんこれ終わったらお終いなら由梨と帰ってよ。嫁連れて帰って」
「そうね。どうする?」
和さんにそんな風に聞かれて、わかりました。と言うと
「んじゃー。ここ座って待っててね」
和さんの隣に座らされて
久々に横に温もりを感じた
ちょっとキュッとなる気持ちを隠して平静を装うけど多分和さんにはバレてるだろうな