第1章 烏野高校一年生。
山「あーあ、行っちゃった。ツッキーのこと、怖かったんじゃない??追いかけなくていいの??」
蛍「なんで僕が。」
山「めんどくさかっただけなら、怒ってないよって、教えてあげたらいいのにー。じゃあ、俺が行ってくる!」
楠さん、ちょっとかわいかったし!
なんて、ボソッと呟きながら、山口は彼女の後を歩いて追った。
山口も所詮男だし、付き合うとか、そういうことには興味があるらしい。
僕は、考えたことないかもしれない。
なんか、めんどくさいし。
「…チッ」
山口が行ったあと、なんとなく後味の悪さを感じて
ゆっくりと屋上を目指した。
あの子、単細胞っぽいし、逃げるならベタに屋上かと思って。
屋上の階段を上がっていくと、頬を赤く染めて心臓を両手で押さえながら「女の子…先輩…」と謎の呪文を唱える田中先輩とすれ違った。
…ことで確信した。
いるな。
扉に手をかけると、山口の声。
また余計なことを…
山「俺、山口!さっきはツッキー怒ってるように見えたろうけど、めんどくさかっただけだから、気にしなくていいと思うよ!いっつも名前の読み方きかれるんだって!」
扉を開くと、楠サンが山口の手を握っていた。
だからどうって訳じゃないけど、ムカつく。
………山口のくせに。
蛍「山口うるさい。」
山「ごめんツッキー!じゃ、俺は先に戻るよ!」
山口が去ったことを確認した楠サンは、ちょっと俯いて、口を開いた。
「ご、ごめんなさいっ!私…!」
蛍「別に。慣れてるし、気にしてない。ほら、教室戻るよ、楠夏蓮サン。」
「ありがとう…!」
仲直り…?
なんて僕には似合わない言葉だけど、
そのやりとりで、ホッとしたのは気のせいじゃない。
まぁ、険悪にならなかったんだからそれでいい。