第21章 気持ち。
―月島side
いくら谷地さんと付き合ったとはいえ、まだ夏蓮のことが頭から離れない。
飲み物も、タオルも、おにぎりも、夏蓮からしか受け取りたくない。
夏蓮のタオルを使いたいがために、わざとタオルを忘れたりもしてみた。
でも、僕がいま手に持っているのは谷地さんのタオルで、なんの魅力も感じない。
だけど、僕は谷地さんを傷つけていることだけはわかる。
おにぎりをもらいに行った時も、
タオルを指しだしてきたときも、表情は一緒だった。
泣きたい思いを我慢して、それでも僕に見てもらおうとする強い瞳。
そんな目を見て、僕は何をしたいのか、わからなくなってしまった。
―谷地side
おにぎりを上げようとしても、人に気づかれないようにさっと夏蓮ちゃんのところに行ってしまう月島君。
対抗して蛍くんと呼んでみても、月島君の表情に変わりはみられなかった。
きっと、些細な変化には気づいていないかもしれない。
でも、私は気づいてしまった。
蛍くんと呼んだ時の夏蓮ちゃんの表情に。
嫌だなぁ。このままその思いに気づかなければいいのに。
そう考えてしまう自分にも嫌気がさす。
こんな時、日向なら…、夏蓮ちゃんならどんな主役になりたいと思うんだろう。