第20章 急接近
―月島Side
「…」
どう答えたらいいのか、わからなかった。
いつも見たいに、嫌みっぽく振ってあげれば、相手も僕を嫌いになってくれるだろうに。
…でも、知ってしまった。
人を好きになるって気持ちを。
あきらめたくないって思いを。
それを知ってしまった僕は、この子になんて言ってあげたらいいんだろう。
素直に、好きな人がいる、って?
僕は、夏蓮に彼氏ができたと聞いたとき、僕は、すごく、辛かった。
気が狂いそうになるくらいには。
「夏蓮ちゃん…。」
僕の前にいる女の子が、僕が考えていた女の子の名前を告げた。
「知ってる、から。ほかの人は知らないと思うけど…、でも、私は月島くんが好きだから、月島くんが誰を好きなのか、わかった。」
頭がいいだけある。この子に嘘はつけない。
「そうだね、君の言う通り、夏蓮が、好きだと思う。」
「でも、彼氏がいる。…それでもいい。それでも、一緒にいてほしい。いつか、私を好きになってもらえるように、頑張るから!」
「…僕は…、」
なにを迷っているのかわからない。
早く振ってあげればいいのに。迷わずに、夏蓮しか好きになれないと、言ってしまえばいい。
本当はわかってる。なにに悩んでいるのか。
もしも、このまま夏蓮が僕を見てくれなかったなら、
僕には、なにが残るんだろう。
目の前に、好きだと言ってくれる人がいるのなら、
あきらめる言い訳になるんじゃないだろうか。
「でも…やっぱり私なんて月島くんには似合わないよね!いやーわかってはいたんだけど…」
「いいよ。」
ははっと、空っぽな笑みを見せる彼女に、
今僕は答えた。
「…え?」
谷地さんの顔は、どんどん赤みを帯びていく。
「ただ、僕が好きなのは夏蓮。それは、変わらない。だけど、バレーも、恋も、上には上がいる。だから…、」
やっぱり、僕を好きだと言ってくれるなら、それでいいじゃない。
たった一人のために熱くなるなんて、僕らしくもない。
「つっ、つまり、…月島くんの彼女に、なってもいいってことで…?」
「…そういうことなんじゃない。」
「ほんとは…月島くんが、誰を好きでも傍にいたかったから…、私、頑張るね…!」
目に涙を浮かべて喜ぶ彼女を横目に、どこか、罪悪感を感じる僕がいた。