第19章 雛鳥。
―夏蓮Side
翌日から、仁花は正式に入部することになり、黒いジャージを受け取っていた。
あとはテストを残すのみ…
「じゃ、テスト返すぞー」
校内で、そんな嫌な声を誰もが聞いて、嫌な緊張感を味わっているところだった。
「あれはもしやスカイツリー!?」
「いや、あれは普通の鉄塔だね」
結果、赤点を回避できた田中先輩と西谷先輩が興奮し、笑われている始末。
ぶひゃっひゃと笑ってさりげなく私の肩に手を回そうとする黒尾さんに、さわやかな笑みを浮かべて、私の肩に回ってきたのは菅原先輩の手だった。
黒尾さんも、ニッと意味深な笑みを菅原先輩に返していた。
…うーん…男の子同士でしか通じ合わないものがあるらしい。
「っていうか、人足んなくねーか」
ふと、辺りを見回して言う黒尾さんに、澤村先輩が言いにくそうに話し始めた。
…そう、影山君と日向君が赤点回避できなかったことを…。
黒尾さんにはやはりバカにされたようで…。私たちは苦笑いを浮かべることしかできなかった。
準備を終えて体育館にて、各校がアップをとっていると、ある視線が突き刺さっていることに気づく。
「す、菅原先輩…、音駒にあんな人いましたっけ…?」
銀色の髪で、金色の瞳。背の高いバレー部の中でもずば抜けた身長の男の子がこちらをじーっと見ていた。
「いや…、いなかったと思うけど…。」
そう苦笑いしながら言うと、あえて彼から私が死角になるように立ってくれた。
彼は整った顔立ちはしていたけど、やはり無言でじっと見られるのは怖い。