第17章 恋をしてしまったから。
ー仁花side
昼休み、バレー部の1年二人組が勉強を教えてほしいと私を訪ねてきた。
日向と影山くんは、勉強が嫌いらしい。
二人に勉強を教えている最中、ふと廊下に目をやると、楠さんと月島君が並んで歩いていた。
お似合いだと思う。本当に。
だけど、そんな様子を見て、私の胸はツキンと痛む。
入学式の時から、ずっと気になっていた人だった。
4組に並ぶ、身長が高くてメガネのかっこいい人。
その姿を追いかけて、好きになることに時間もかからなかった。
はっ…でも、私なんかが隣にいたらファンの女子たちに狙われるんじゃ!
なんて思いを繰り返しているうちに、最近はある女の子と歩く月島君の姿を目にするようになったんだ。
マネージャーに誘われて初めて、その女の子が楠さんだと知った。
そりゃあ同じ部活なんだから歩く姿を目にしたっておかしくないよね!
でも、羨ましいと思った。
私も、マネージャーになったらあんな風に月島君と並んで二人で歩けるのだろうか。
「谷地さん、どうかした?」
「えっ?いや、なんでもないよ!」
日向君に声をかけられてぼーっとしていたことに気づく。
「あぁ、月島と楠さんか。月島のやつ、勉強教えてくれねぇのに、楠さんの手伝いは自分からやるんだぜ。ほんと!ケチ島だよな!!」
「そういえば、あいつ楠さんの頼みは絶対に断らねぇよな。」
「そう、なんだ…。」
目くじらたてて怒る日向とノートを写しながら言う影山君をみて、またツキンと胸が痛む。
他の人の頼みは断るのに、楠さんの頼みは、断るどころか自分から申し出る。
それが、どんな意味をあらわすのか、私ならわかる。
だって、恋をしてしまったから。