第9章 虎探し
「そのうえ、今日の寝床も明日の食い扶持も知れない身で……」
僕はあの時に言われた言葉を思い出す。
「こんな奴がどこで野垂れ死んだって……いや、いっそ喰われて死んだほうがーー」
もう僕なんてこの世に価値なんかない。
死んだほうがいい。
「却説……そろそろかな。」
太宰さんのその言葉で僕は空を見上げる。
綺麗な満月であった。
そのとき
ガタン!!!
「!」
虎が来たのか!?
「今……そこで物音が!」
「そうだね。」
「きっと奴ですよ、太宰さん!」
「風で何か落ちたんだろう。」
何故この人はこんなに落ち着きが有るんだ?
「ひ、人食い虎だ。僕を喰いに来たんだ。」
僕がこんなに焦っているのに
「座りたまえよ、敦君。虎はあんな処からは来ない。」
「どうして判るんです!!」
太宰さんはさっきまで読んでいた本を閉じて話す。
「そもそも変なんだよ。敦君」
何が?