第2章 壱点ハ 治療〜家康〜
「はい、手首。」
と言って家康さんは私の右手首に冷たく冷やした濡れた布を包み込む。
「冷たっ!」
「我慢して。」
私は、我慢する。
しばらくすると、
私の右手首は少しだけ痛くなくなって
息も落ち着いて吸えるようになった。
「ありがとうございます、家康さん。」
「…………ねえ。なんで俺だけ敬語なの?」
驚きの言葉が私の耳を疑わせるように飛んできた。
「え?家康さんは、……私のこと嫌いだと思ったので……」
私の声はだんだんと小さくなっていく。
「何それ。まあ、兎に角。敬語ダメ。さん付けも却下。」
「え!?でも家康さ……!」
「家康。はい言って。」
私は、クッと歯を食いしばって
「家康。」
「ふ。よく出来ました。」
家康は初めて笑顔を見せてくれた。