第1章 blue
「明けまして、おめでとうございます」
と部屋に上がる前に深々とお辞儀をすると
丸まった背中がピシッと整えられて
「今年もよろしくお願いします」と
お辞儀を返された。
顔を上げてチラッと彼を見ると
目が合って「ふふふ」と2人で笑う。
「…久しぶりすぎるよねえ?」と
眉を下げてニヤニヤしながら
右手で鼻をかく彼の空いた左手が
私の右手を自然に掴んで
リビングへと誘導する。
家の中で手繋ぐなんて、
バカみたいに甘いけど
私たちはここでしか繋げないし
新年だし久しぶりだし
まあいいか
とたぶんその行動に対してなんの疑問も
持っていない智くんの歩き方まで
フワフワしてて
新年早々その空気感に幸せを感じて。