第5章 purple
「興味、ない?」
イラッとしたのか眉を寄せて
目を細めた彼が
ハア、と大きくため息をつく。
久しぶりに会ったのに
めでたい正月なのに
会ってしまうとこうなるのは何故だろう
「・・・・・・」
「・・・さん、」
嫌な空気の中、沈黙を破ったのは
彼の方だった。
「俺は嫌だ、さんがもしも
仕事で他のヤツとキスするなんて
考えただけでもイライラする」
「・・・私にそんな仕事、ない」
「・・・うん、そうだよね、
・・・だから本当に辛くなる
さんは俺がこんな仕事してて
どんな思いするんだろう、って」
彼が背を向けた私の背中に
そっと触れる。
「嫌なら嫌って、俺を怒ってよ」
そんなの、そんなこと
「・・・出来るわけ、ないじゃない
仕事なんだし、子供じゃないんだし、
言ってもっ・・・意味、ないし・・・」
いやだ
こんなことで泣くなんて
面倒な女
「意味ないことなんて、ないよ」
後ろから彼の香りがフワッと
私を包み込む。
「さんの言ってる意味はわかるよ
でも、そのまま言わないで抱え込む方が
俺らにとって意味がないと思うんだ、
・・・言ってくれたところで
何にも変わらないじゃん、て言われると
ほんとその通りなんだけど・・・でもね」
彼が段々早口になっていく
余裕なんてない、
そう言っているみたいで
私のことを一番に考えようとしてくれている
気持ちがすぐに伝わった。
「俺、頑張るし
あんな演技のキス、さんに
してるものとは全然違うって
わかってもらえるまで俺、頑張るから」
私の肩に顔を埋める彼に
そんなことまで言わせて
嬉しくないわけない。