第5章 purple
扉を背にした松本くんに
体重をすべて預けるようにする。
段々と立っているのも
危うくなって
二人してズルズルズル、と
崩れ落ちた。
松本くんはまだ
私をきつく抱き締めたまま。
私はペタリと座り込む。
松本くんは、頭を後ろに反らせ
扉にゴンともたれかかる。
私の体は彼の両足のまん中。
頭に手を置かれ、
顔はしっかりと胸につけられる。
松本くんの心臓の音が
トクトクと響いて
自然と涙は流れなくなった。
「…、」
ずずっと鼻をすすると
彼が自分の服でそれを拭う。
「………」
「………」
今の顔面なんて
ひどいに決まっている。
「……汚いよ」
「…ね?」
「…そこは否定して」
「はは、すみません」
と涙のあとを消すように頬に触れる。
「…亮介さんに、バレてしまいました。
お付き合い、してること」
「そう」
「…ごめんね」
「だからなんで謝るかな。
さんの、
そういうハッキリした性格
好きなとこの1つだよ。」
「…ハッキリして、ないよ」
「ううん、いつでも俺に自分の気持ちを
言ってくれた。
亮介さんのこと引きずってることも
俺が好きだってことも
今だって、何も隠さずにいてくれた。」
「………」
「だから信じてる。
さんが言うことを
俺は信じる。
俺が見ているさんが
本当の貴方だって信じる。」
信じる、
その言葉がどれだけ偉大な言葉かなんて
今まで知らなかった。
好き、愛してる、なんかよりも
それが伝わる彼の想い。
「松本くん…好き、大好き…」
見つめあうと
優しい顔をして微笑む彼の唇が重なった。
END.
「、さん…ストップ
そこ、抱きつくのはダメ」
「え?…あ、や、ご、ごめん!」
「…うんまあ男はダメなの、
こんなとこで2人きりになるとさ」
「…う、うん」
「帰ったらちゃんと教えるから、続き」
「え!(つ、続き)」
「…でも待って、やっぱもう少しだけ」