• テキストサイズ

君と紡ぐ100のお題

第5章 purple







本を読み始める彼の肩に
頭を乗せる。


彼が私を1度見て
また視線を本に戻すのが視界に入る。






「松本くん、」

「ん?」

「亮介さんが、戻ってきた」




「え?」とまた私に顔を向ける。







「今、同じ職場で働いてるの」

「…うん」

「たぶんね、来週の顔合わせ、
 亮介さんも一緒でね」

「うん」







不機嫌になるかな、と思ってた。
でも彼はただ、聞いてくれる。

何も悪いことはしていないけど
なんだか亮介さんと一緒にいることが
松本くんに悪い気がして
ずっと言い出せなかった。





「好きだよ、潤くん」



彼の腕に額をつけるように
寄り添った。





私、あなたがいてくれなかったら
今ごろまた
あの人のそばに行っていたかもしれない。




「…好きなの、いつの間にか、
 こんなに大きくなってて…」





こんな私を
いつも包み込んでくれて
ありがとう。






「潤くんが大好きだよ」









ちゃんと伝えたかった。

いつも曖昧を許してくれた貴方に。

ずっと待っていてくれた貴方に。


ちゃんと好きだよ、と感謝を
私のいつも言えない胸のうちを。






「…、さん」

松本くんが私の頬に優しく触れる。







「…名前呼ばれるのって
 死ぬほど嬉しいのね」


と照れたように笑う。






「大丈夫だよ、心配してないから俺。」



そう、私は心配してほしくなかった。
信じてほしかった。

もう、亮介さんとは何もないって
そう言いたかった。







「ありがとう」

私がそう言うと
「俺こそ」とお礼を言われる。





「え?」

「話してくれて嬉しかった」

「……」

「気合い、入れなきゃ」

「…なんで?」

「当たり前でしょ、
 昔の男に今の男は負けられないの」


「…そんな、もん?」

「そんなもん」と言った松本くんが
本とコーヒーをテーブルに置いて
「うっし!」と腹筋をし初めた。













END.











「98、99、ひゃーく」
「…よし、さんプロテイン補給!」
「松本くん、相手はボディビルダーじゃないよ」
「ほら!早くマネージャー!」
「…(好きだなあ)」

/ 449ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp