第5章 purple
「…あー疲れた!」と松本くんがソファーにダイブする。
「ハーブティー、飲む?」
「わっ、飲みたい」
たった今入れたばかりのそれを
マグカップに注いだ。
「疲れた時に良いよね」
と普通に言っただけなのに
「なんかあったの」
と聞かれる。
いつもと何が違ったんだろう。
「え?なにも、ないよ?」
「…疲れてる?」
「…そ、うだね、うまくいってないのが
1件あってさ」
と嘘の理由をつけた。
「そっか、さんの仕事、
ほんと凄いよね」
と優しい言葉をくれる彼に
胸の奥がチクリと痛む。
咄嗟のこの嘘にどんな理由があるのだろう。
亮介さんが戻ってきただけなのに
何もないのに、
松本くんに言えないのは何故だろう。