第3章 gleen
作った飯とビールを飲みながら
テレビをつけて
傍にはこいつを置いて。
ビューラー、うん確かそんな名前。
なんかこうやってまつ毛挟むんだよな、
と興味本意でやってみた。
「なんじゃこりゃ」
鏡で自分の顔を確認すると
まつ毛に折り目のような形がついて
これで女の子は可愛くなっているだなんて
信じられない。
右目と左目の違いに違和感がありすぎて
ビューラーを当てた目を擦った。
突然ピンポーン、とチャイムが鳴って
はいはい、と腰をあげた。
扉を開けると冷たい風と
こんばんは、と笑う彼女。
『あれ、なんか可愛い』
「え!なにが?」
『まつ毛、上がってる』
ふふ、と笑う彼女が扉を閉めて。
「あ、いや、これは」
『雅紀くんのとこに忘れてたんだね
お家に無くてさ』
「………、」
"俺なんか可愛くない、
ちゃんがやったら可愛いのにね"
と言いたかったけど
こういうセリフはやっぱり恥ずかしくて
言えない俺。
その変わりに
寒い、と言ったその唇にちゅ、と音をたてた。
『…めずらしい』
そんなことないよ、
と上着を着たままの彼女を抱きしめて
『…なんかあった?』
「なんにもないよ」
『今日雪が降ったのは雅紀くんのせいか』
腕の中で笑う彼女に俺も笑った。
このまま、朝まで一緒にいて
耳元でそう言い残すと
『明日の朝も大雪だね』
なんてギュッと俺の背中に腕を回す。
きみの、名前が出てこないあいつと
1日中一緒だったから
いつもきみが頭の中にいて
今日はきみなしじゃ寝れない気がするんだ。
END.
『え、携帯見てないの?』
「あ、忘れてた」
『え、なんで凍ってるの』
「あ、忘れてた」