第3章 gleen
DVDをはい、と渡されて
それをセットしようと席を立つ。
彼の横を過ぎる時に
DVDを持った腕を掴まれて視線が合うと
黙って私を見つめる彼の瞳が
潤んだように光った。
緊張した面持ちで
口を開いた彼が
「そろそろ付き合いませんか、僕達」
なんて
歯を食い縛るような顔をして。
格好のついていない彼の表情と
汗ばんだ手の震えに
愛しさが込み上げて
答える前に笑いが出てしまう。
ちょっともう、笑うところ~?
そう言う彼も笑っていて
その表情はいつもの彼で。
ごめんごめんと謝ると
「付き合ってくれたら許してあげる」
そう言って可愛い笑顔で微笑んだ
私がずっと好きだった人。
END.
ケンカしてもこれを思い出すと
忘れていた気持ちに気付ける。
傍にいられる、
それだけで幸せだということ。
傍にいてくれるだけで、
笑い合えるということ。
「雅紀くん」
ソファーに深く座る彼の名前を呼ぶと
少し不満げな顔でこちらを見る。
「ごめんね」
もう口をきかなくなって
何時間経っただろう。
ケンカの理由も忘れた頃に
昔の記憶を思い出すと
さっきまで言えなかった言葉が
すんなり出てくる。
驚いた顔した彼が
急に泣きそうな声で
「…俺の方がごめん」
と訳のわからない謝り方で
近づいてきた。
「…ほんとにごめんなさい」
もう一度私の目を見て言ってくれた
元気のない彼に
昔言われた言葉のマネをして。
「好きって言ったら許してあげる」
そう言って笑うと眉を下げた彼が
同じように笑ってくれた。
「好き好き好き好き大好きそういうとこ!」
勢いよく私に抱きつき
ぎゅーっと力強く腕を回された、
そんな仲直りの仕方もある。