第3章 gleen
リビングへと扉を開けると
彼が荷物の整理をし始める。
「…雅紀くん、荷物そんなにあるの?」
2日泊まるには多すぎるように見える
パンパンに詰まったボストンバック。
「うん、だってね、人生ゲームでしょ、
トランプでしょ、ビンゴゲームでしょ、
あ、これいる?ふふ、相葉すごろく、
なぜか俺ん家にあってさ、
面白かったから持ってきた」
とバックから出てくるのは
全部遊ぶ道具で。
その量の多さに驚いてつい
2人でするの?と尋ねると
2人でしよーよ、と
またテンションが上がったのか
白い歯を見せて笑う彼の声が裏返る。
「あはは、2日じゃ足りないよ」
何気なく言った一言に
「じゃあずっと一緒にいてよ」と
落ち着いたトーンで話す彼が
私の手を優しく握って
「冗談なんかじゃないよ
俺、ちゃんとなら
ずっと一緒にいたいから
このゲームが口実になってくれるなら
願ったり叶ったり」
いつものケラケラ笑う彼が
そこには居なくて
急な真剣モードの雰囲気に
一瞬戸惑う。
「ま、さきくんそれは」
「マンションね、新しいとこ
契約してきた。
今よりも広いとこで
いずれは一緒に住めたらなんて考えて、」
とんでもない申し出に
心臓が出そうになった。
「今すぐになんて言わないから、
準備が出来たら教えてほしい。
俺はいつまでも待てるから」
彼らしい、私を気遣う優しい伝え方と
2人の未来を考えてくれているという
気持ちが嬉しくて
「…あーもう、泣かないでってばあ
…ふふふ、」
彼の大きな体に包まれて
その大きな愛を感じた。
END.
「あ、これ母ちゃんが
ちゃんにって」
「わ、桂花楼の春巻き!」
「もし一緒に住んでくれるなら
もれなくうちの中華もついてくるよ」
食べ物で釣ろうとする彼に
じゃあ一緒に住む、と笑って返すと
やった、と素直に喜んで。
またひとつ、
次の段階へと進んだ2014年の始まり。