第3章 gleen
ライブ終わり、
ニノから飯誘われたけど
ちゃんのことが気になって
家に直行した。
なんだかライブ中
凄く泣きそうな顔をしていたから。
俺、バカだから
いつも気付かないで
知らないうちにきみを傷つけて。
だから今日もきっと
何かしでかしたんだと思う。
マネージャーに車で送ってもらい
自分の階まで走った。
鍵を開けて部屋に入ると
ソファで目をつむるきみ。
「…、ちゃん」
乾いた涙の跡に触れると
ピクッときみが目を覚ます。
「…雅紀、くん」
どうしたの。
何かあったの?
俺、またなんかした?
心の中で沢山の不安が
溢れてくるけれど
それを口には出来なくて
顔が歪んでしまう。
「…雅紀くん、隣の人がね
櫻井さんの彼女だったよ」
「…うん、驚いた。2人並んでたから」
「途中まで気付かなくてね、
優しくしてもらったんだ」
「ね、いい子でしょ?」
「…うん、いい人だった。
手握ってくれたら安心したの」
「…そっか」
「雅紀くん」
名前を呼んだきみが腕を伸ばして
俺の首にしがみつくように
縮こまった。
「…うん?」
その小さな背中に腕を回して
優しく抱き締めると
「また会いたいな」と言った。
「…うん、じゃあ翔ちゃんに言っとく
今度は4人で会おうって」
「…うん」
たぶんだけど、
俺らと付き合うってことは
好きだけじゃ、やっていけないことも
あるんだと思う。
そういう時に
俺だけじゃカバーしきれなくって
例えば、翔くんの彼女みたいな
そんな存在が必要なんだと思う。
たぶんだけど。
「…一緒にお風呂入る?」
「…やだ」
「なんでよー翔ちゃんとこは
毎日一緒だって言ってたもーん」
「よそはよそ!家はうちです!」
「あはは、そうだね、うちが一番だ」
「…ふふ、なにそれ」
きみが安心できる居場所を
早く作ってあげたいと思ったのは
丁度この時くらいから。
END.
「マンション買おっかな」
「え!買うって…?」
「…一緒に、住みたくない?」