第3章 gleen
「…ま、雅紀くん、一体何が…?」
「え!?何がって…気づかない?」
気づかない?と言われ、辺りを見回してみる。
「…ごめん、全く」
「あちゃー、マジか!」
と彼が片眼をつむり、出来ないはずのウインクのつもりか、顔はくしゃくしゃで、頭を手で押さえる。
「何か変わった?」
私の質問に嬉しそうな表情を見せる。
「うん!夏がきたよ!」
夏?まだ肌寒いけど、
季節って大体暦で見るものじゃないの?
「雅紀くん、夏はまだ早いんじゃあ…」
「うんん!そんなことないよ!
ほら、もう夏の香りがするよ」
と眼をつむり大きく息を吸う彼。
やっぱり雅紀くんは感覚が人よりも敏感なんだと思う。季節を鼻でかぎ分ける人なんて初めてです。
「やっばいね!俺夏が一番好き!」
と白い歯を見せて笑う彼が楽しそうで
夏が一番苦手だった私も
雅紀くんと一緒なら
楽しいに違いないと
まだ肌寒い夏の訪れに期待が膨らんだ。
END.
「なんで一番夏が好きなの?」
「暑いとテンション上がんない?」