第2章 red
「まだ寝ないの?」
『まだ寝ないのってこっちまだ夕方だよ』
「あ、そっか」
電話の向こう側で笑う彼の声が
私を余計に寂しくさせるから
我慢できなくて眠たいフリをした。
『…じゃあ、また連絡するわ』
「…うん」
『ねえ、ちゃん?』
「うん?」
『俺ね、ロシア語上手くなったよ』
「そうなの?凄いなあ」
『うん、それだけ』
「はは、なにそれ」
『…うん、じゃあ』
「うん、…じゃあ」
なかなか切れない電話の向こうで
聞こえてきたのは
『 Я тебя люблю 』
愛してる、だなんてクサイ台詞。
END.
『使い道、あなたにしかないんだから』