第2章 red
「そう言えばこの間のライブ、
隣に相葉くんの彼女が居たよ」
帰ってきてすぐ
ネイビーのダッフルコートを
脱いでいる最中の彼に話しかけた。
「え?ああ!そういや
彼女来るって言ってたかも」
「もう、ビックリしたんだから」
「え、なんで」
といつもの半笑いでこちらを向く彼。
「急に泣き顔で櫻井さんの…、
なんて言われるから」
「…泣き顔?」
「…うん、彼女泣きそうだった。
ライブ中もね、どこか具合悪そうで。
翔くん何か相葉くんから聞いてる?」
「いんや、何も。
ケンカでもしたんかなあ。」
「…翔くん、私また会ってもいい?
相葉くんの彼女」
「え?あ、うん、いいけど
どったのちゃん」
どうしたの、と聞かれると
特にどうもしてないんだけど
「仲良くなれる、気がしたんだ」
私と貴女だけがわかる、
何かがあるような気がする。
貴女があの時
泣きそうだった理由が
私にはわかるような気がする。
「…へえ、
俺はいらない、そんな感じ?」
翔くんが眉を下げて
小さく微笑みながらこちらに近付く。
「や、いやらないって、そんな…」
「あはは、本気にした!」
と真面目な顔した私を見て笑う。
「…ちょっと櫻井さん」
「…ははっ、あーごめん、
嘘嘘、いや、嘘じゃねえか」
なんて意味わからない。
「少し寂しいと思ったのは本当、
でもメンバーの彼女のこと、
そんな風に言ってくれたのは感動」
「あれ?韻ふんじゃった?」
「あ、バレた?」
とふざけたように笑う翔くんが
すぐに優しい顔をして
「…彼女がちゃんで
よかったなあ、なんて
思っちゃったりしてるんですよ今」
と私の腰に手を回して
グイッと身体を引き寄せられる。
「…ん?そんな場所あった?」
私が首を傾げると
「んー、そういうとこ」
と額をゴツンとぶつけられた。
「い、痛い」
「すみません、
可愛いと虐めたくなる質なんで」
彼が額を離してニヤリ、と笑った。
あの時は驚いて
あまり話せなかったけど
次会ったときには必ず、
なんて勝手に心の中で約束をした。