第6章 『ブッキングデート』
「出掛ける?」
「はい、是非町に行きませんかと誘われました。この間、助けていただいた方ですので、お礼に行って参ります」
ぴしっとお出かけ用の服、お気に入りの白いワンピースに着替え、首元には釣り合わない高級そうなサファイアのチョーカー。
少し子供臭い黄色の肩掛けカバンも、お下がりだ。
「待て、俺も行く。お前の保護監督役だ」
「はい、わかりました。おまちしています」
にこにことご機嫌の白いワンピースの少女、ウリエという。
先ほどのつっけんどんな男、彼女の保護監督役と言った人物は、リヴァイ。彼女の所有者であり、彼女の男と言ってもいい存在だ。
彼の支度は早かった。特に先ほどと代わりが無いように見えるが、首に巻かれたスカーフが別の物だ。
「どこへ行くんだ。遠くまで行くのか?」
「あまり遠くへは行きたくないと伝えさせていただきましたので、いつもの町ではないかと思います。待ち合せもそこです」
兵舎を出て、街へ向かって歩き出す二人。
「大きな尻に襲われたとか言ってた時の奴か? あの、黒手袋の」
「黒手袋の人ではない方です、ラビと言うお名前です」
「ラビ」
リヴァイは鋭い目つきと、いつもと変わらぬ不機嫌そうな雰囲気は、近寄りがたい雰囲気を醸し出しているが、横にいる彼女には関係のないことだ。
「あの、リヴァイさん。どうして黒い手袋を?」
「返す」
そうですね、お返しした方がいいですよね。なんてほほ笑む彼女をよそに、リヴァイの表情は鬼その物。
自分の大切な女が、散歩から帰ってくるとその手に男物の手袋をはめていて、頂きました。と笑顔で言うもんだから、奪い取ってやった物だ。
こいつは俺の女だ、手を出すな。と意味も込めて手袋を突き返してやるつもりだったが、この手袋を渡した奴が来る訳ではないのか。と眉を寄せるリヴァイ。