第1章 ブルーベルにて
ある日、ユイがいつものようにお店で給仕をしていると、ドアがカランと鳴り男が入ってきた。
「いらっしゃいませ・・・」
お客様かと思ってユイが振り返ると男は警察の制服姿だった。
「失礼します。ユイ様でいらっしゃいますか?」
「はい、そうですけど・・・」
「私はノエル警部の部下です。警部からこちらのお手紙を預かってます。ユイ様にお渡しするようにと言われまして」
ユイは手紙を受け取った。
”ユイちゃん。いろいろあってしばらくカフェに行けなくなっちゃった。いつもの茶葉、うちに届けてくれる? ノエル”
(ノエルさん、どうしたんだろう?)
「実は昨日、警部は以前逮捕した男に襲われ、怪我をして今は自宅で休んでいるのです」
「えっ?!」
ユイは突然のことに驚いて持ってたトレイを落としてしまった。
トレイを拾い、すぐにアレクのもとに駆け寄る。
「アレク! 私、あの、ノエルさんのお見舞いに・・・!」
アレクに事情を話した。
「・・・わかった。ノエルさんは大事なお客さんだからな。行って来い」
「うん! 行ってきます!」
「でしたら、私がご案内します」
ノエルの部下が案内することになった。
ユイはノエルがいつも飲んでる茶葉とよく食べてるお菓子を持って急いで出て行った。
残されたアレクはドアを見ながらつぶやいた。
「ったく、なんて顔してんだ・・・」
今にも泣きそうなユイを見て、アレクは複雑な表情を浮かべた。