第4章 導きの星は誰を照らす
木漏れ日の差し込む森の中、自分は花冠を作っていた。真っ白な小さな花は一つなら愛らしく編んでいくと花嫁のヴェールの様に美しくなる。 この世で一番大好きな人に渡すそれを作る手が何よりも誇らしく出来上がった冠を空に掲げる。
『ルプス』「ははさまっ!」優しい母の声が聞こえ振り返る、神秘的な白い髪と星屑の様な金色の目、真っ白なドレスを着た母がいた。それはまるであの国で見た絵画のような
『どうしたの?』キョトンとした顔で首を傾げる母に不安になりながらも口を開く「ははさまはプリンセスなの?」「私は貴方のははさまでしょ?」優しく微笑む母に安堵の息が漏れ、そのまましがみつく、暖かいのにとても安心する筈なのに何故か心はとても不安で押し潰されそうになる。
「・・・・っ!」眼を覚ますと見慣れた天井と布団とは違う柔らかく暖かな感触 横には目を閉じた若干青白い母の顔。頬に触れればやや暖かな温もりが伝わる。ソッと芽吹く様に母の瞳が開き
「あら、起きたの?」囁く様に優しい声が耳に入る。ゆっくりと身体を起こすと折れてしまうのではないかという華奢な身体を一度伸ばす。そんな母に倣い自分も起きようとするのを
「もう少し寝てなさい、直ぐにご飯作るから」そう言ってやんわりと阻むのだ。「ははさまと一緒がいい」そう言って抱き着くと暫し、困った顔をしている隙に頬に柔い唇を押し当てる。
「仕方ないわね」そう言って、僕にもお返しをしてくれる。結局ご飯は一緒に作らせてはくれないけど、これがいつもの朝の恒例。
朝食は昨夜のシチューを香草を練り込んだパンに挟んだサンドイッチと家の家庭菜園で獲れた新鮮野菜とハーブのスープとサラダ。
どれも僕の好物だった。久々の母の味付けに舌鼓していると母はお茶を飲み終えると、宿を開ける準備を始める。
「今日はお客さんどのくらい来る?」「さぁ、どうだろ?予約のお客様は一件あるけど、もしかしたら国王様がお忍びで来るかもね」「王様、ははさまの料理好きだもんね。また兵士さんに怒られるね」「ねー」準備が終わるのを見計らって、僕も外に出る支度をする。「それじゃあ、いってくるね。」「・・・。」「気持ちは嬉しいけど皆、貴方の話を聞きたがってるわ。だから、ね?」
ははさまはズルい。いつも諭す様に言って絶対手伝わせてくれない。
「うん。」
だから、あの夢を見ると不安になる。