第2章 考察と調査
ウィスタリアのとある執務室
品の良い机には、まるで天使の彫像の様に整った美貌の男が眉間に皺を寄せていた。
金色の朝日のような梳られた髪、澄み渡る青空のように明るく綺麗な瞳。ミステリアスで神秘的な雰囲気が品の良い調度品に囲まれた人形の様にも見えるがその表情には苦悩と疲労の表情が見られ人であることが認識される。
微かなノックの音が響き
「入って」
人形のような男の良く通る声が執務室に響く、
「失礼します。ハワード卿・・・・いえ、国王陛下」「どっちでもいいよ好きに呼んで」
苦笑交じりに笑みを浮かべる人形のような男はかつて『氷の貴公子』と呼ばれた現ウィスタリア国王であった。
「プリンセスの消息はまだつかめていないみたいだね」
目線を手に持った書類に移す。報告書であった。
「はい、申し訳ありません。」
「ジルの所為じゃないよ。ただ今回捜索に参加した騎士たちを十分ねぎらってあげて随分遠くまで探してくれたみたいだから」
かつての氷の貴公子はプリンセスの失踪しておよそ3年後国王として即位した。
6年前まだ彼女が愛しい婚約者とともに過ごしていた当時はまだ候補としてあげられていただけだったが、あの舞踏会のあと、プリンセスが内密にジルと前ウィスタリア国王に告げていたのだ。
『ルイが心から望み国民が彼を指名したなら次の国王にして下さい。』
今思えば、舞踏会の不正後彼女は近いうち国を離れる事を予想していたのだろう。
失踪後、不正が明らかになった後ジルはプリンセスが指名した次の王を宣言した。その英断に異を唱える者はなかった。
それでも3年、ルイは民達に待ってもらった。指名してくれたプリンセスに恥じぬ王となる為、自身が王になるのを望むのか考える為
そして、権謀渦巻く王宮の闇に巻き込まれたプリンセスをこの手で探したかった。
それが、過去の自分と重ねた憐みなのか、今なお胸を疼かせる淡い恋情ゆえなのか国王自身まだ心定めてはいなかった。
が、3年の期限で自身の進む道と意志を定めることは出来た。
かつて、謀略で彼女を貶めた官僚は任を辞し、城の門には国民が姫が帰還するよう願いを込めた花が毎日添えられる。
「はやく、かえっておいで」
皆、君を待っている。