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【A3!】劇団員たちとの楽しい日常。

第1章 アネモネとキス。



 夜ご飯を食べ終わって時刻は午後8時を示していた。いつもは学生組で賑わう談話室は、そろそろ中間試験が近付いているらしく、また大人の人たちも部屋に戻っていたりお風呂に入っていたりと今は誰もいない。
 自分の仕事でもあるお皿洗いを終えると少し休憩しようとソファーへと向かった。


「、あれ」


 誰もいないと思っていた談話室のソファーに密さんが横たわっていた。すやすやと穏やかな寝息を立てて眠っている密さんに、この時間に寝ていたら夜眠れないんじゃないかと心配が頭を過る。密さんのことだから眠れないということはないんだろうけど、念の為起こしておくべきだろうか。
 密さんが眠るソファーに近付く。改めて見ると年上とは思えない幼い顔をしている気がする。いつもは見えない右目が、前髪が流れて僅かに見えている。起こすという使命を忘れてしばらくぼんやり眺めてしまった。


「………」


 少し、触ってみてもいいだろうか。邪な考えが浮かぶ。幸か不幸か、今ここには自分と眠っている密さんしかいない。つまり邪な考えに支配された私を止める人はいない。おそるおそる、右手を密さんの髪へと伸ばした。
 密さんの髪は思っていた通りの柔らかさだった。お風呂に入った後ということもあり、さらりと指の隙間を通る髪が気持ち良い。癖のある髪を指で梳いていると寝言とも取れない密さんの声が小さく漏れた。
 起こしただろうか。と思わず手を引っ込める。しかし起きた様子はなく、またすぐに穏やかな寝息を繰り返していた。ほっと安堵したのは邪な感情からか。そもそもは起こす為に近付いたはずなのに。


「もう少しだけ」


 自分に言い聞かせるように呟くと、次は密さんの頬へと手を伸ばした。普段生活している上では絶対に触れないところ。人差し指を頬へと触れさせる。そこから中指、薬指、小指と落としていくと頬に手を添えているような形で、何故だか少し恥ずかしくなった。密さんの体温を感じながら、未だ起きる気配のない密さんの顔を間近で見つめる。今起きたらまるで夜這いでもするつもりなのではと誤解されてしまうだろうか。
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