ヤンデレヴィクトル氏による幸せ身代わり計画【完結済】
第5章 関係が変わる話
また桜の知らない情報が出てきて、何が本当なのか分からなくなる。
「そんな、でも…ヴィクトルさんは勝生選手を好きで、叶わないから私を身代わりにして…」
「一度ヴィクトルと話をしてみませんか?僕と貴女が話し合っても本当の事はヴィクトルにしか分からない。
あの人最近調子が悪いんです。心ここに在らずといった感じでぼーっとしている事が多い。かと思えばスマホを熱心に見つめて、がっかりした表情でまたぼーっとしてる。
返事が来ないって呟いてました。相手は貴女ですよね?」
「確かにメッセージは貰ってます。でも会うのは多分無理…。
私あの人の事好きになってしまったんですけど、ちょっと乱暴にされたのがトラウマになってて…会うのが怖いんです。
けれど会いたいってメッセージは毎日来て、勝生選手がヴィクトルさんと恋人同士になったらそれも無くなって、私もこの恋心を忘れられるって思ったんですけど」
桜はこの際思っていることを聞いてもらおうと全てのことを打ち明けた。
それを聞いた勇利は少し悩んだ素振りを見せたあと、首を横に振ると、自身の考えを口にした。
「それはどうだろう、彼は貴女を好きだと思うから僕がもし彼に好きだと告白した所で貴女を放す事はないと思います。まあ好きじゃないんで告白しないですけどね」
「そんな…もう、どうしたらいいのか分からない……あ、すみません、こんな事言われても困りますよね、勝生選手の気持ちも考えず変な事をたくさん言ってごめんなさい。今日は貴重なお時間をありがとうございました」
「いいえ、気にしないで下さい」
「すみません、ちょっと気分が優れないので失礼します」
「大丈夫ですか?」
その心配する声に、失敗した笑顔で答えた桜はその場をあとにした。
勇利が食事を終えてレジに赴いた時、支払いは全て終わっていることを店員に教えられた。
「すみません、お会計お願いします」
「さっき一緒にいた女の子が払っていったよ。迷惑を掛けてしまったからって、あんた勝生選手だよな?あんたのスケート俺好きなんだ、次のシーズン楽しみにしてるよ」
「そうですか…はは、ありがとう」
去っていった彼女の姿はとても小さく見えた。
自分に何か出来ないだろうか、勇利は練習に戻る道すがら考えを巡らせ、そして自身のコーチに連絡を入れた。