ヤンデレヴィクトル氏による幸せ身代わり計画【完結済】
第2章 身代わりの話
「急に画像いっぱい送ってくるなんて、熱でも出たの?」
家へと着いた桜を、待ってたよー、と中へ招いたヴィクトルに、挨拶もそこそこに彼女は疑問を投げかけた。
「熱なんて出てないよー、俺サクラの写真持ってなかったから、俺の写真いっぱい送ったらくれるかもって思ったんだよ、まぁ実際に来たのはお弁当の写真で、催促しても目元を隠した写真しか貰えなかったけど」
ほわほわとした笑顔でそう答えたヴィクトルは、さらに言葉を続ける。
「あ、でもあの目が隠れたのちょっとエッチだから気に入ってるよ」
それを聞いた桜は思わず、男のおでこに手を伸ばし、思い切りデコピンした。
「いたっ」
「エッチじゃないから!」
「あはははは、照れてるの?可愛いね」
「怒ってるの!」
今までヴィクトルから写真が送られてきたことは無かった。
いつも「いつ来れる?」みたいな呼び出しに関する連絡しか来なかったのに、今日は何故か何枚も写真が送られてきたので、なんだか友達になったみたいだと少し嬉しく思ったのだ。
なのにこの仕打ち。
(勘違いも甚だしい、浮かれた自分が馬鹿みたい。)
桜は大きなため息をついて、そう言えばと、口を開いた。
「今日はいつもより早い時間を指定したけど、何か話でもあったの?」
(例えば勝生選手との仲直りの惚気とか)
その考えは口には出さず、彼女はヴィクトルの返答を待てば、彼から返ってきた返事は予想もしていなかった事だった。
「サクラに早く会いたかったからに決まってるだろー?変な事聞くなぁ、あ、今日はケーキ買ってきたから今から一緒に食べよう、紅茶かコーヒーどっちがいい?」
「へ?あ、じゃあ、紅茶で…お願いします」
思わず丁寧な言い回しを使ってしまうほど、衝撃的だった。
「サクラおいで、どのケーキがいい?」
ちょいちょいと手招きされて、彼の持ってる箱を覗けば何故か沢山入っていて、桜は困惑しながらもシンプルな苺のケーキを指さした。
「じゃあこれが食べたい」
「1個だけ?お腹いっぱい?好きなやつ食べれるだけ全部食べていいよ。日曜日慰めてくれたお礼」
(それでケーキね、納得した)
ならば遠慮することはない、と桜はもう一つ気になっていたものも選び、お皿に二つ並べて貰った。