第14章 あいしてる
初めて 彼女と会ったのは10年前
ZEROの顔合わせの時だった
凛として 清楚な
堂々とした 彼女
アイドルがキャスターなんて と叩かれる俺と
ミニスカートばっかり履いて と叩かれる彼女
お互いに
そんなのに負けないで頑張ろうね と
いつか言った奴等を見返してやろう と
苦しい 辛い時期を
共に過ごしてきた 戦友
交際を噂されて
付き合い始めたばかりの智くんに誤解されて
必死に弁解したっけ
彼女はそんなんじゃない
彼女には あの人がいるんだから と
本来なら漏らしてはいけない情報まで曝して
イチメンの時
俺の位置から 村尾さんの隣で
にっこり微笑んで頷いてくれてた彼女
結婚してからは
それこそ疎遠になってはいたけど
会う気になれば いつでも会えた
でも
もう 2度と 会えないんだ
彼女の生の笑顔も 声も聞くことも
『頑張りましょうね!』って背中を叩いてくれることも
もう ない
頑張ってたのに
幼い子供たちと 最愛のご主人を遺して
逝きたくなんかなかったろうに
悔しくて たまらない