第1章 別れ
「きゃあっ!」
「ユア!」
「おねえちゃん、逃げて!!」
「!?」
男の一人が顔を真っ赤にして叫ぶ。
「このクソガキ…!!ぶっ殺してやる!!」
しかし、別の男が止めた。
「待て!!こいつも目の色が違うぞ!!こいつだって売れるかもしれない!!」
「何だと!?って…おい、もう一人が逃げたぞ!!」
ユーリは逃げた。ユアをおいて。
走って走って走り続けた。
いくら走ったかわからない。
途中で足がもつれ、転んだ。
「ウッ…」
足を見ると、擦りむいて血がにじんでいた。
空が暗くなってくる。そして、ぽつり…ぽつり…と雨が降り始めた。
手を見ると、手にはたくさんの切り傷があり、血を流している。体も、服はところどころ破け、赤く染まっていた。窓ガラスでついたのだろう。
私は逃げた。もう一人しかいない家族を残して。私はー…たった一日で家族を失った。帰る場所はもう無い。何で?何でこんなに苦しい思いをしなきゃだめなの?普通に生きられないの?
雨は強くなるばかりだ。ザーと音も聞こえる。
「う…うっ…」
嗚咽が出る。
今のユーリには、泣くことしか出来なかった。
雨か涙かもわからない水が、ユーリの手の血を洗い流していた。