第60章 葛藤

「さっき… “俺の知らない”って言いましたけど、幸男さんと私だけの思い出だって…たくさんあります」

「………」

「大切なのは今だと思います。そんなこと言ったら…私だって…」

「…何だよ」

「…幸男さんが過去に付き合ってい女の子の事を考えると…」

「ッ…な…何言ってんだよッ！」

「……ぁ…えと…ご…ごめんなさ…」

幸男さんは顔を真っ赤にして慌てたようにそっぽを向いた。


私は初恋は幸男さんだけど…
幸男さんが何人の女の子と付き合った事があるかはわからない。

よく森山先輩がナンパに行ったとか聞いてる限りでは…少なくとも私以外の女の子と付き合ったことはあると思っていた。

そっぽを向いたままのその様子に詮索してやっぱり聞くべき事じゃなかった…と後悔して謝ろうとするとギュッと抱きしめられる。




「い、一度しか言わねえからな…」

「……？」

「俺にとって…聖知が…」


話ながらさらにギュッと抱きしめらると幸男さんの鼓動が聞こえる。ドクンドクンと心音が早くて緊張しているのがわかりそっと見上げると林檎みたいに顔を真っ赤にした幸男さんと目が合った。





「……初恋だ……」

「…………」