第58章 初恋の再会
ノックをすると部屋に入ってきたのは女医と氷室だった。
「聖知ちゃん…!
良かった…
聞いてたより顔色良いみたいで安心したよ。」
「ぁ…ひ…氷室くん…?」
満面の笑みで氷室は笠松がいるのも構わず、近くの椅子へと座る。
躊躇することなく心配そうに聖知の手を優しく握る姿に、笠松は無言で氷室を睨みつけた。
「くれぐれも…さっきみたいな喧嘩はしないようにして下さいね。」
「わかってます…ありがとうございます。」
「……喧嘩って…?」
女医が釘を指すように出ていくと聖知は何のことか解らず首を傾げ、笠松に視線を映すと気まずそうに笠松は目を逸らす。
「あぁ…聖知ちゃんは気にしなくていいよ。それより…もう体調は大丈夫かな…」
「体調は大丈夫です…それより、さっきは危ないところを助けてくれて…本当にありがとうございます…ここに連れて来てくれたのも氷室くんだって聞いて…」
「男として当然のことをしただけだよ…それより…氷室くん、じゃなくて昔みたいに名前で呼んで欲しいな。それに同い年だし、敬語も禁止ね…?」
「ッ………!」
そう伝える氷室は聖知に恍惚のような眼差しを向ける。
そんな2人のやりとりを笠松は嫉妬心を抑え込んで見守っていたが、我慢できずに急に立ち上がった。