第58章 初恋の再会
「室ちん、ソレ…いつも下げてない?」
「あぁ…そういえば…敦に話した事なかったかな。幼い頃、ストバスである女の子に出会ってよく遊んでいた時の事を思い出したんだ。」
「ふーん…」
「あの日も…今日みたいに雲ひとつない快晴だった。
いつものように彼女と遊んで別れたんだ…
また明日も遊ぼうってね…
次の日も当然また会えるって思っていた。
でも…彼女はそれっきり…
……姿を現すことはなかった。」
「…………」
氷室は懐かしむように、聖知との出会いを話し始める。
今でも…鮮明に思い出せる。
それだけ氷室にとって聖知は特別だった。
一目惚れだった。
初恋…聖知がストバスに顔を出す度に心臓がドキドキして止まらず、一緒に過ごす度、聖知に惹かれ…子供ながらにもっと好意を抱くようになった。
だからこそ、なぜ突然姿を現さなくなったのかわからず…幼い自分にはそれ以上調べることもできなくて…
月日だけがどんどん過ぎてしまった。
「室ちん…もしかしてさぁ…よく学校で告られてるとこ見るけど…断ってんじゃん…まさかとは思うけど…その幼い頃に出会った女の子が忘れられないとか…って言わないよね。」
「敦にしては察しがいいね。俺はいつか彼女にまた会える…そう信じている。」
「いや…普通に考えて、来なくなったのって…飽きたとかじゃないの…しかもアメリカにいた時の話なんでしょ?…室ちん今、日本にいる時点で再会するのってありえないじゃん。」
「そんなのわからないだろ?人と人との出会いっていうのは…巡り巡ってまた返ってくる…俺はそう信じてるんだ。」
紫原が言ったことは、氷室も考えたことがあった。
でも当時の彼女の心底バスケをしている姿を思い出す度、『その可能性は無い』という自信に変わる。
『何か事情があって来れなくなったんじゃないか』と思い、もう一度彼女に会えることを信じてこの写真を肌身離さず持ち歩いていた。