第57章 温もり
「幸男さっ…」
「今日…母さんいるし…あんま2人でゆっくりできねえから…さっきの続き…埋め合わせは近いうちにしてくれるよな?」
「っ……は…はい。」
笠松は聖知を抱きしめたまま、自身の願望を聖知に欲するように話す。最初こそは聖知の手に触れるだけで精一杯だったが、聖知と身体を重ねてからは底が知れない程求めてしまう。
笠松の言葉の意味がわかると、聖知は頬を赤らめたままゆっくり頷く。その様子に笠松は満足してそっと聖知を離した。
「え…えと…明日…お昼から行くよう話しておきますね。」
「あぁ……俺、前向きに頑張ってる聖知は…すげえ強いと思うし立派だと思う。でも、無理して欲しいわけじゃねえ。苦しい時は無理すんじゃねえぞ。」
「…私…幸男さんがそう支えてくれるから頑張れます。自分の気持ちをぶつけてどうなるかは分かりませんけど、一緒に聞いてくれますか?」
「当たり前だろ…多分、大丈夫だとは思うが…またひどい事言うなら俺も黙ってねえし、あんま背負い込むなよ。」
今までの人生の中でこれほど大切に求められたこともなく、恥じらう気持ちを感じながら聖知は明日の話をしようと話題を変える。
明らかに恥ずかしさで動揺している様子が感じられても、笠松にはその様子でさえ可愛く愛しい気持ちに駆られる。
自然と聖知を見る視線が柔らかいものへと変わり明日の朝と昼からの話をして聖知を母のいる部屋まで送り届けた。