第54章 協力者
幸男さんの家でゆっくり眠ることができても…
朝になると赤司君のことが頭から離れることはなかった。
不安……焦り……怖れ……
そんな気持ちを抱えたまま…涼太に赤司君のことを聞かれて、考えることを放棄して逃げた……
不安な気持ちを抱えたまま昼休みになり…
ミーティングが終わると監督に呼び出された。
洛山への引き抜き話……
もちろん行くつもりなんてない……
言葉では行かないと伝えたけど……
不安は残る……
こんな気持ちのままじゃ…
きっとまた、幸男さんに心配をかけてしまう……
どうしたらいいのか……わからない……
そんな中…涼太がなぜか体育館にまだ残っていて、監督に半ば強制的に連れて行かれ…少し1人で考えてみようと思っていると森山先輩が嬉しそうに駆けてくる。
「聖知ちゃん!」
「笠松先輩と…森山先輩…」
どうやら、監督との話を2人は聞いていた様だった。
監督の言葉からも心配かけすぎていたのかと感じていると、いつもの様に森山先輩が暴走し始めた。
「大体笠松…お前は女性への接し方がわかっていない。
ちゃんと聖知ちゃんに毎日、愛は囁いてるのか?」
幸男さんは、私と目が合うと顔を赤くして視線を逸らし、森山先輩といつものように言い合いノートらしきものを押し付けられているのを見て自然と笑みが溢れる。
何も問題は解決はしていない…
それでも…いつもの光景…2人のやりとりを見ているうちに…
なんだか…自分が落ち込んでいる事が小さな事に思えてくる。
笑うのを堪えているとだんだん我慢できずに吹き出すように笑ってしまった。
もう、悩むのはやめよう。
答えなんてとっくに決まっている。
立ち向かう勇気……
今すぐ持つには時間がかかるかもしれない。
でも、私は1人じゃない。
幸男さんと一緒ならきっと乗り越えられる。
「ふっ…っ……ふふっ…!
ごめんなさっ…つい…ふふっ…」
私の心の中のモヤがなくなり…
澄んだ青空のように晴れやかになる
久しぶりに心から笑うことができた気がした。