第45章 今は1人でいたい
「聖知……」
「…………」
瑛一は娘の聖知の言葉に何も言い返せず、今にも泣きそうな表情をしているのを見て優しく頭を撫でる。
「…わかった……聖知がそこまで言うなら引退はしねえよ……寂しい思いばっかりさせて悪い……」
「そんなことない……ありがとう…お父さん…」
聖知の説得に観念したように瑛一はパソコンを開いて引退表明のデータを削除する。その様子を見て聖知は安堵し柔らかく微笑む。
聖知は引退表明の話が無事なくなり安心したように学校へ登校した。今日の部活の朝練は休みで自分の教室へと向かう。
「…あっ…聖知っち!」
「涼太…」
「本当に怪我…大丈夫っすか?」
教室に入ると一目散に黄瀬が聖知に駆け寄る。頭に包帯を巻いてる聖知を心配そうな表情を浮かべそっと頭に触れようとする。
「大丈夫だよ。…心配してくれてありがとう…」
そっと…黄瀬に手を触れられそうになると笠松がいつも撫でてくれた事を思い出して目を伏せてかわすように自分の席へとつく。