第24章 桐生 怜
日本時間 18:00 如月家 執事室
燕尾服の男が1人。
鳴り響く電話に手を伸ばし受話器を取る。
「おや…紅羽様… ご無沙汰しております、本日はいかがなさいましたか?」
「…桐生…どういうつもりかしら……私は貴方を信用して聖知を任せたはず。なのに、そこに住んでないのはどういうことか説明してもらおうかしら。」
「はい。お嬢様はこの屋敷にはお住まいになっておりません。全てお嬢様の意向で現在はお一人でお住まいになっております。」
「貴方…私に無断で勝手なことをッ…」
「紅羽様…私が言うのもおこがましいですが… この屋敷に住んだままなら澄香様の時と同じ結末になると私は存じます。」
聖知の祖母である紅羽が日本にある如月家に連絡をすると真っ黒な燕尾服を着た執事が応対する。
その電話は、聖知が屋敷に住んでいない真意を確かめるため。
「……どういうことかしら……」
「澄香様は紅羽様が幼少の頃から同じように屋敷に隔離して英才教育をされていましたね。ですが…澄香様はどうでしょう……。
どこぞのよくわからないバスケバカ…失礼…旦那様…瑛一様と周囲の反対を押し切ってご結婚されました。同じやり方では同じ結果になるかと存じます。」
「貴方…私に喧嘩売っているの?」
「とんでもありません…。紅羽様はお嬢様には澄香様と同じことにならないように必要以上に厳しく教育していただきました。ですから…教養は十分身についております。今のお嬢様に足りないのは自立性です。教養が身についていても活かせなければ意味がありません。ですから…1つの約束を交わしてお嬢様には現在はお1人で暮らしていただいております。」
「約束…?」
電話の女性は苛立ちながら話を聞いていて執事である桐生は臆することなく余裕の笑みを浮かべ話を進める。